第一歩
寒稽古
中学生のときの部活動の顧問の話を思い出した。僕は剣道部だった。
季節は冬、たしか11月か12月頃だった。その時は土曜日の朝連で朝6時か7時だったか、とにかく早い時間から稽古をやっていた。体育館と武道場が寒いので白い息が出るほどだった。面をつけて練習する前の顧問の話であった。
「冬は寒いが、冬の特に朝はもっと寒い。温かい毛布に包まっていながら目が覚める。その時自分と葛藤する。もう少し暖かい毛布に包まっていたいと思う自分と戦って、寒いけれども自分の身体を自分で起こす。これも修行だ。」
剣道7段55歳ぐらいの顧問の言葉だった。いま考えれば、親に起こされてばかりいないで、せめて自分のことぐらいは制御できるようになれという意味が含まれていたんではないかと思う。大げさかもしれないがそのことが自立の第一歩であると。